Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

茨城県を代表する常陸牛生産者のトップランナー/常陸牛指定生産者 成島克巳さん

# 育てる人(農家)

「今日は奮発して美味しいものを食べたい」そんな時、多くの人が思い浮かべる食材の代表格といえば牛肉。ステーキ、焼肉、すき焼き……美しいサシの入ったジューシーな和牛は最高のご馳走です。数ある牛肉の中でも、茨城県が誇る最高級ブランド牛が「常陸牛」(ヒタチギュウ)。指定生産者が丹精込めて育て上げた黒毛和牛の中でも、定められた格付けを満たしたものだけに名乗ることが許されるものです。実は、県内でも指折りの常陸牛指定生産者がつくば市にいます。これまで数々の受賞歴も有する生産者の成島さんにお話を伺いました。

【茨城県が誇る常陸牛とは】

茨城県のオリジナルブランド和牛・常陸牛。そもそも、和牛はその名から国産牛と混同しがちですが、実際には日本が固有に食肉用として品種改良を進めた中から特に指定した4品種「黒毛和種」「褐毛和種」「日本短角種」「無角和種」のいずれか、または4品種間の交雑種と厳正に定義されています。そのうち90%以上を占めるのが「黒毛和種」。よく知られている松坂牛や神戸牛、近江牛も黒毛和種です。常陸牛もそれらと同じく黒毛和種であり、かつ厳しい基準をクリアした牛だけが茨城県常陸牛振興協会より常陸牛として認証されます。その厳しい基準とは、「指定生産者が茨城県内で最も長く飼育した黒毛和牛の内、(社)日本食肉格付協会の枝肉取引規格が歩留A等級又はB等級かつ肉質等級が5等級と4等級のもの」(※茨城県常陸牛振興協会ホームページより引用)。つまり、指定生産者が育てた黒毛和種でも格付A5、A4、B5、B4ランクに達しなければ常陸牛にはなれないのです。だからこそ常陸牛は全国でもトップクラスの高い肉質を誇ると評価を得ています。
常陸牛の歴史は昭和51年にまでさかのぼります。茨城県産牛銘柄確立推進協議会が発足し、県内の優秀な黒毛和種を選抜し常陸牛と命名したのがその始まり。今回、お話をお伺いした成島さんのお父様も、常陸牛ブランドが始まった当時の立ち上げメンバーに参加していたのだそうです。
「元々は、私の親は牛の生産者ではなく販売・取引を生業にする家畜商をしていたんですが、私が18歳の頃に畜産業をスタートさせたんです。この仕事はもう50年になりますね」という成島さん。肉用牛の生産者は大きく分けて2タイプがあり、母牛に子牛を生ませ出荷する「繁殖農家」とその子牛を買い立派な肉用牛として生育する「肥育農家」が分業しています(または、両方を行う一貫経営農家の場合もあります)。成島さんは茨城県を代表する肉用牛肥育農家の大ベテランとして、地域の若手農家から模範とされてきました。

繁殖農家からやってきた子牛は生後7カ月で体重200kgほど、出荷される30カ月の頃には800kg以上に達するのだそうです。

【50年で培った名人の目】

成島さんが肥育農家を始めたころには既に和牛の定義づけはされていましたが、まだまだ高級肉用牛の需要はありませんでした。「当時はホルスタイン種が中心。その他にも、交雑牛などひと通りの牛はやりましたね。今は和牛の肥育が100%、ほとんどが常陸牛です」と成島さん。現在肥育しているのは約90頭ですが、今の規模は以前の1/3ほどなのだそうです。「昔は数を飼えば儲かる時代でした、多い時には250頭ぐらいいましたよ。でも今は〝量より質〟なんです」。肉用牛として質を高めるために、成島さんは「まずエサが重要」と話します。常陸牛と呼ばれるための条件については前述した通りですが、実はその中に飼料についての決まりはありません。が、質良く歩留まり良い身体に肥育するためにはやはり毎日の食事が肝要なのです。「今は何でも改良が進んでいるので、サシを入れやすいエサも開発されていて、どこの生産者でも使われていますね。でも私はサシが入りすぎてもしつこい気がするんです。肥育のエサは穀類が主体ですが、穀類ばかりあげれば大きくなってくれるというわけでもない。牛への理解が深まるにつれエサも変えてきました。ふすま(小麦かす)を入れたり、塩分でミネラルを与えてあげたり、バランスも重要。それに効率重視で急激に大きくするよりも、じっくり育てた牛の方が肉に旨みがあると思います」。また、育成期から肥育期の成長段階に合わせた飼料を与えることや、食べさせるタイミングなどでも肉質に差が出ると成島さんは言います。「子牛はどんどん身体を大きくしてもらわなきゃいけないので高タンパク高エネルギー。逆に終盤には低タンパクのエサに変える。何カ月時点で何キロの体重にするために、どれくらいの量のエサをあげる……という数値をきちんと見ることも大事です。でも、同じようにやっても同じ牛にはならない。ちょっとした環境の変化でも牛の状態は変わってしまいますから。自動給餌器を使ったこともあるんですが、逆に取っ払っちゃいました。機械だとちゃんと混ざっていないことがあるし、自分の手であげる方が確実なんです」。便利な設備を活用し効率重視の経営を行う人が多い中、昔ながらの設備と方法で牛と向き合っているという成島さん。50年来、このつくば市の牛舎で培ってきた経験則こそが成島さんを名人たらしめているのでしょう。

エサは一日2回。差別化のひとつとして、飼料に納豆菌を加える提案も行っている成島さん。納豆菌配合飼料を食べた牛は、その堆肥にも良い影響があるといいます。

【つくばで食べたい美食・常陸牛】

現在、茨城県家畜商業協同組合理事、茨城県肉用牛生産者協会副会長、常陸牛研究会副会長などの肩書きを持つ成島さん。これまで、成島さんが育てた牛たちは茨城県肉用牛共進会名誉賞(農林水産大臣賞)、常陸牛枝肉共励会名誉賞をはじめ数多くの肉用牛品評会で華々しい成績を残してきました。そんなプロの目から見て、つくば市は農家にとってどのような環境なのでしょうか。
「牛にとって極端な暑さや寒さは良くないんです。湿度が高いのもいけないので、どちらかといえば乾燥している方が良いですね。そういう意味ではつくばの環境は牛にとっても悪くないと思います。それに何より、つくばは立地が良い。大消費地の東京が近く、更に同じ県内の鹿島港には大規模な飼料コンビナートがある。輸送費のコストが低く済むのは大きな利点です。私が畜産を始めたころは、この辺りは緑ばかりだったんですが……今は開発が進んで環境ががらりと変わってしまったので、昔から続けている農家にとっては適応するのが難しいところもあります。昔は市内肥育農家も20軒ぐらいありましたが、いまは7軒まで減ってしまいました。でも、協力し合いながら頑張っていますよ」。成島さんはじめつくば市内の肉用牛生産者は連携を密に取り合い、その仲間たちにも大いに助けられているといいます。
担い手の減少はつくば市に限ったことではなく県全体として言えることですが、茨城県の肉用牛産出額は近年右肩上がりの増加傾向を示しています。農家の努力により、優れた肉質の牛が増えているのです。常陸牛も、2020年度には年間販売頭数1万頭を達成。「常陸牛はそれを支える組織がしっかりしている。質の良いものを安定的に供給できるようになったのがいい」と、成島さんも取り組みの成果に笑顔を見せました。
最後に、成島さんに牛肉の選び方のコツを教えてもらいました。「皆さん、良い牛肉を選ぶときは霜降りを見ますよね。サシが大きく派手に入っている方がパッと見たときにウケがいいんですが、プロが選ぶのはきめ細かなサシが入っているものです。部位は、モモ肉は軽めで女性にオススメ。男性には肩肉などがオススメかな。やっぱり焼いて食べるのがいいですね」。また、美味しいお肉のお供にはつくば市の美味しいお酒も欠かせません。ワインはもちろんビール、日本酒との組み合わせもぜひお試しください。
常陸牛は生産者が指定されているだけでなく、販路でもその品質・信用を高めるために販売指定店(精肉販売)と販売推奨店(飲食)を認証しています。もちろん、つくば市内にも常陸牛を買える、食べられるお店が多数。今晩の食卓には、美味しい常陸牛とつくばのお酒、そして楽しい会話を添えてみてはいかがですか。

牛の健康管理にも留意しながら日々世話をしています。「牛も風邪を引いたりするんです。病気かな、と思ったらまず熱を測ってね」。

茨城県が誇る常陸牛を育むつくば市で、美食に舌鼓。

成島克巳さん
つくば市中内

【常陸牛に関するお問い合わせや指定店・推奨店一覧は…】
茨城県常陸牛振興協会
TEL:029-292-8364
http://ibaraki.lin.gr.jp/hitachigyuu.html

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