Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

感動的に美味しいブルーベリーを作るクリエイティブファーマー/アオニサイファーム 青木真矢さん

# 育てる人(農家)

科学技術の最先端が集う「研究学園都市」の名を冠する一方で、筑波山麓の豊かな自然に恵まれたつくば市。古くから様々な農畜産が営まれてきました。米作のように昔から今も変わらず盛んなものもあれば、時代のうつり変わりと共に減るものもあり、代わりにまた新たな作物が根付いてきた歴史があります。そして今、つくばを代表する「芝」も転換期を迎えています。今回は、代々続く芝の農家から新たなスタートを切った「アオニサイファーム」の青木さんにお話を伺いました。

40歳でつくば市に新規就農した青木真矢さん。奥様・若奈さんの生家が営む農地を受け継ぎ、アオニサイファームをスタート。

【芝とブルーベリーと運命的な出会い】

つくば市を代表する作物のひとつブルーベリー。既にFarm to Tableつくばでもご紹介しているとおり、つくば市は日本三大ブルーベリー産地のひとつにも数えられています。市内に軒を連ねる魅力的なブルーベリー農園にまた新たな顔ぶれが仲間入りしました。2020年につくば市上郷で就農した「アオニサイファーム」の青木さんは、元々東京都内を拠点に広告デザインの仕事をしていた異色の経歴の持ち主です。グラフィックデザイナーとして充実した日々を送っていたところから、農業の道へ進むことになったきっかけは「芝」と「ブルーベリー」だったといいます。
「奥さんの実家がつくば市の農家で、お祖父さんを中心に芝を作っていたんです。けれど、近年は芝の需要も減ってしまっているし、お父さんはサラリーマンだから農業を継ぐ人もいない。だったらその農地で何か出来たらいいなと思っていました」という青木さん。折しも、人から依頼を受け制作する仕事にとどまらず「自分自身で新しい何かを生み出し発信していきたい」というクリエイティブな想いが膨らんでいた時期。漫然とした気持ちを抱えながら、とりあえずお祖父様と一緒に芝作や田植えなどを手伝いながら農業に関わり始めた青木さんのところに、運命的な出会いがありました。
「僕の故郷の京都の知人から、ブルーベリーの観光農園を始めるから広報として手伝ってほしいという依頼があったんです。ブルーベリーといえば、ちょうどつくばの特産品じゃないですか。広報の仕事自体は都内に居ながらでも出来るものでしたが、ブルーベリーなら将来的に自分たちもつくばでやれるかもしれないし、農園を作るところから参加させてもらおう!と思って家族で京都に移住しました」
京都で三年間過ごす間に、農地の開墾から栽培、農園運営のノウハウを学んだ青木さん。2019年10月につくばへ移住し新規就農すると、その経験と知識をフル活用し翌年にはお祖父様の元・芝農地を活用してブルーベリー農園を完成させたのです。

足元はシート張りで、子ども大人もお年寄りも快適に楽しめる環境。ブルーベリーはアオニサイファームでの直売に加え、市内果物店、スーパーや飲食店での取り扱いも今後予定しています。

【ブルーベリーにも自分にも最適化した独立適応栽培】

実際に農園を訪れると、ネットで囲われたビニールシート敷きのエリアにブルーベリーの木がたくさん配されていました。その根元を見ると、なんとすべて鉢に植えられています。アオニサイファームでは、23品種、約900本のブルーベリーをひと苗ごとにポット栽培。とにかく美味しいブルーベリーづくりを目指し、青木さんが立ち上げに携わった京都の農園と同様の方法を取り入れたそうです。
「〝独立適応栽培〟と名づけました、僕が(笑)その名の通り、一本一本独立したポットで、気候や生育状況に合わせて肥料を配合し、それぞれに適応した育成をする。ブルーベリーは元々北米原産ですから、その環境になるべく近づけてあげることで、ブルーベリー本来の美味しさをより発揮できるようになる。実際、僕も京都でこの方法で栽培したものを食べてみた時に美味しさに感動して、ブルーベリーのイメージが全く変わりました!その感動を、アオニサイファームでも感じてもらいたいです」と笑顔で話す青木さん。実際に、ファームを訪れたお客さんの中にも「普段全くフルーツを食べない子供がここ(アオニサイファーム)のブルーベリーはパクパク食べてくれる」といった嬉しい声もあったそう!栽培品種にもこだわりがあり、特にハイブッシュ系に注力。ハイブッシュ系はラビットアイ系に比べ、一般的に収穫量が少なくシーズンも梅雨時期と重なるため観光農園にとっては難しいと言われます。ですが、大粒で皮が薄く甘酸のバランスも良いハイブッシュ系の食味の良さに魅せられた青木さんは品質最優先でハイブッシュ系をより多く導入。アオニサイファームでは高品質なハイブッシュ系14品種、マイルドなラビットアイ系9品種を6:4の割合で栽培し、6月から8月までの約三カ月間摘み取り体験を実施しています。
また、青木さんが独立適応栽培を導入したメリットは品質の他にもあるといいます。
「植え付けから収穫までにかかる期間が地植えより短いですし、作業負荷も大きくなく、家族経営で無理なく世話ができています。作業部分にかかる負担を減らして、ブランディングや、農業の魅力や情報の発信といった自分のやりたいことに充てることが出来る。思い描いていた形にぴったりだったんです」(青木さん)。農園を経営しながら、これまで通りデザイナーとしての仕事も両立できているそう。パラレルワークでやりたいことを叶える、新しい農業のスタイルを実践しています。

休憩所兼事務所でグラフィックデザインの仕事も。軌道に乗れたのは父母を始め家族の協力のおかげと青木さん。「92歳の祖父も農地整備を手伝ってくれ大活躍でした。農業で家族の繋がりが出来たことも良かったですね」

【つくばの農業を盛り上げる、クリエイティブパワー】

2020年にスタートしたつくば初の独立適応栽培ブルーベリーは順調に生育し、2022年には立派な実をつけました。3年の育成期間を経て2023年に満を持して正式オープンする予定でしたが、少しでも早く味わってもらいたいと2022シーズンはプレオープンとして開園。取材に伺った6月下旬には、ハイブッシュ系がたわわに実りを迎えていました。「生育途中ではありますが、自信を持って食べていただける美味しいブルーベリーが出来ました!品種ごとの味も全然違うので、試食してお好みのものを見つけてみてください」と、想像を超える出来栄えに太鼓判。味自慢のハイブッシュ系の中でも、編集部が魅了された品種が「トワイライト」。大きな粒を口に含めば、ほのかな酸味と共に上品な甘さが優しく広がります。何粒でも食べられそうな美味しさ!青木さんの言う通り、甘さや酸味、食感など、それぞれに異なる個性の味を体感できます。さらに、アオニサイファームはカフェも併設。本格石窯ピザやブルーベリーを使ったアイスやドリンクを通年で提供し、摘み取りシーズンのみならず年間を通して様々な魅力ある場をつくります。カフェは奥様・若奈さんが主に担当。無糖ブルーベリーソースと水牛モッツァラレラチーズにハチミツをかけていただく異色のブルーベリーピザは驚きの美味しさ。そしてつくば市の有機栽培を代表する農家・石田農園さんのベビーリーフをこれでもか!と使ったサラダピザも必食です。
青木さんはこの他にも、剪定したブルーベリーの枝葉で草木染め体験や、芝の端材敷を活用したドッグラン、マルシェの開催など農業に留まらず一年中さまざまな楽しみ方ができる場所を作りたい……と将来像を描いているそう。就農のきっかけになった芝の悩みも、ブルーベリーへまるきり変えてしまうのではなく、芝作の歴史も受け継ぎながらお義父さんを中心に新たな販路開拓や芝の魅力の発信をすることで「これから先も続けていける、つくばの芝農家の形を作りたい」と話します。
アイデアマンであり、地域や人をどんどん巻き込んで一緒に農業を盛り上げようと精力的に活動している青木さん。農業はアイデア次第でもっと面白くなる。それを自ら実践しながら発信していこうと、青木さんは元Jリーガーの近藤直也さんと共に「ワニナルプロジェクト」も主宰しています。地域がもつ力と、農業を志す人の力を組み合わせるアイデアを生み、結果を出す。そんな、地域を盛り上げる農家のコミュニティ=『輪』」をつくることを目的としたプロジェクトです。その一環として、学生たちと結成したアオニサイファーム取材班がつくば近郊の農家を取材し情報発信する活動も。個の力だけではなく、地域一体の農業の魅力をクリエイトしようと奮闘しています。
「東京に居る知り合いのデザイナーから、〝面白いことやってるね〟ってよく言われるんです。そうしたら僕は〝一度つくばに来て体感してみてよ〟って勧めるんですよ。農業やってみたいって興味を持っている人だけじゃなくて、消費者の皆さんにもぜひ農家さんに足を運んで作っているところを見てみてほしい。アオニサイファームだけじゃなくて、色んな農家さんを訪ねてほしい。つくばには、美味しい野菜や果物を作っている農家さんがたくさんいます。直に来て知って、そこで味わってほしいです」。
インタビューの最後に青木さんが話してくれた言葉は、まさしく「Farm to Tableつくば」の理念とする地産地消への想いに繋がるものでした。つくばに新しい風を吹き込み、可能性の苗木を次々と芽吹かせているアオニサイファームの実りにぜひ注目してください。

カフェで提供する本格石窯ピザは専門店にも劣らない美味しさ!ブルーベリーピザ、近郊農家さんのこだわりサラダピザ両方とも1枚1,100円。テイクアウト(+100円)も可能です。

とにかく美味しい、とにかく楽しい。足を運びたくなる魅力的なファームがまたひとつつくばに誕生しました。

アオニサイファーム ブルーベリー観光農園
つくば市上郷 2223-1

カフェ営業時間 10:00~17:00(16:00受付終了)
定休日 月曜日・金曜日
TEL:029-811-6275
*ブルーベリー摘み取り体験(2022年プレオープン)
開催日 8月中下旬まで(予約は電話、HPより問い合わせ、SNS等で受付)
営業時間 9:30〜17:00(受付16時終了)
休園日 月曜日・金曜日
体験料金 ●大人(中学生以上)1パック付/1650円 ●小学生1パック付/1100円 ●幼児/550円(3歳以下無料)
詳しくはHPをご覧ください
https://aonisai-blueberry.com/

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