Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

豚から育てる、愛情たっぷりハム・ソーセージ/ぴあらハム 久松茂樹さん

# 育てる人(農家)

畜産もさかんな茨城県。鶏(採卵用)、豚、牛(乳用)の農業産出額はいずれも全国で10指に数えられ、中でも豚の飼育戸数は全国で3番目に多く、茨城における畜産業の重要な一角を占めています(※平成31年2月1日現在、農林水産統計データより)。つくばでも昔から養豚を営む農家があります。今回は、自社養豚場で育てた豚でハムやソーセージを作る「ぴあらハム」を取材しました。

【飼育段階が見える安全・安心な食品】

つくばエクスプレス研究学園駅から車で約10分。高層マンションや商業施設が立ち並ぶ町並みから一転、田畑が広がるのどかな風景の中に建つ「ぴあらハム」の工房を訪ねました。すぐ隣には養豚場が建っているのが目に入ります。
「私のお祖父さんの時代から養豚を営んでいて、子どもの頃から豚はとても身近な存在でした。うちでは繁殖から肥育まで一手に行う“一貫経営”。なので、生まれたときから出荷するまでだいたい30週、ずっと豚を見ています。今は、お母さん豚が約100頭~120頭ぐらい。その時にもよりますが、毎週40頭ぐらい出荷します」と、ぴあらハム代表の久松茂樹さん。主にお父様が中心となって養豚場を管理し、茂樹さんは奥様と共に、加工を行う一方で、豚の出荷などにも携わっています。
「家族で豚に関われる生業を」という想いで、茂樹さんがぴあらハムをスタートしたのが2000年のこと。「群馬県の手造りハム工房で住み込み修行をして、ハムやソーセージ、ベーコンなどの作り方の基本を学びました。大手メーカーのような大量生産のものと大きく違うのは、防腐剤や保存料、増量剤などといった必要のない“混ぜ物”を使っていない、ナチュラルさです」(茂樹さん)。そして、原料肉は100パーセント自家生産であることも重要なポイント。出荷された肉を仕入れて作るのでは、実際にどのような環境で育てられたものか知ることは難しいもの。生まれた時から出荷までを自らの目で見守り、そして手ずから加工するからこそ「安全で美味しい」商品だと太鼓判を押すことが出来るのです。

生後約3週間の子豚。すくすく育ち、30週程度で出荷できる大きさになります。加工用豚の出荷のタイミングを見極めるのは茂樹さん。

【自社養豚場だからこそ品質の高さを実現】

また、養豚から加工まで一貫して行うことで、食の安全のみならず品質の高い商品づくりにも利点が多いと茂樹さんは言います。「うちの養豚場では、各々の状態を見て、一般の市場へ出荷する豚と加工用の豚それぞれに適したものを選別して育成しています。最終的に出荷の段階で振り分けるのではなく、一般市場出荷用と加工用では飼料も変えているので食味から違うんですよ。キャッサバにパン粉などを配合していて、例えばハムに加工するときも脂の質が違う。愛情を注いで育てた良い豚肉で作る、美味しいハム・ソーセージを皆さんにお届けしたいので、とにかく品質の高さは重視しています」(茂樹さん)。ぴあらハムのハム・ソーセージは、低ランクの肉を加工に回すのではなく、そのまま食べて美味しいものを加工している贅沢な品なのです。
出荷から加工までのスピードも速く、肉の鮮度が高いことも自社養豚場の強み。基本的には月曜日に豚を出荷・とさつ、翌火曜日に解体された肉を受け取りに行き、水曜日から製造をスタートするのが毎週のルーティーンなのだそう。また、加工前の段階で不要な血合いや脂身を掃除するところにも時間を割くなど、茂樹さんは手間を惜しみません。それもひとえに、自分たちが手をかけて育てた豚への深い愛着ゆえ。
そんなこだわりのハム・ソーセージですが「日常の食事として食べてもらいたいので」となるべく手にとってもらいやすいお手頃価格におさえています。ラインナップの中でも、一番の売れ筋はあらびきソーセージ。ドイツ・フランクフルトで開催されている食肉加工の国際見本市IFFAコンテストでも銀賞を受賞した、本場の職人お墨付きの逸品です。「(スパイスやハーブなどの)シーズニングもなるべく控えていて、すごくシンプルな分、原料のお肉の味をしっかりと味わってもらえると思います。ハムも漬け込む調味液の塩分は控え目。ドイツのハム・ソーセージに比べるとスモークも抑え目で豚肉の風味を大切に活かせるように作っています」。ちなみに、ソーセージのオススメの食べ方は「焼いて、皮の水分を飛ばして表面をパリッとさせた方がより美味しく味わっていただけます」と茂樹さん。皆様もぜひお試しください。

ハム、ソーセージの他ドイツの家庭料理アイスバインも編集部オススメ。2004年にIFFAコンテストに出品したうち、ロースハムやベーコンなど5品目が金賞を受賞。

【地域飲食店を支える小さな手造り工房】

ぴあらハムの商品は、ホームページからのネット販売のほか市内の直売所では「みずほの村市場」「えるふ農国」(イオンモールつくば敷地内)で購入できます。「工房をスタートした頃は、品物を作ることはできても売るのがとにかく大変でした。20年が経って、今ではありがたいことにリピーターも増えました。毎年、通販で詰め合わせセットを注文してくださる方や、つくば市内の研究所にお勤めでドイツにご縁のある方にもご愛顧いただいています」と微笑む茂樹さん。加えて、個人飲食店もぴあらハムにとって大切な顧客です。パン屋やカフェ、洋食レストラン、バーなど様々なジャンルの飲食店へ商品を卸しているといいます。「決まった商品を小売店に卸して販売するだけでなく、飲食店それぞれからの要望にお応えして専用のカスタマイズ商品を製造しています。例えば“スパイスを強めに効かせてほしい”、“パンに合わせた長さのソーセージを作ってほしい”とか。小ロットから生産できる手造り工房だからこそ、小回りが利くのでそういったリクエストに細かくお応えすることが出来ます。もちろん手間はかかりますが、やりがいはありますね」と茂樹さん。市内では、北条地域の「カフェ・ポステン」や研究学園地域のパン屋「ピジョンポスト」などで愛用されています。ポステンではホットドックに使うソーセージが特注で、ピジョンポストではベーコンとソーセージがピザに使用されるなど、つくばの飲食店を支える一翼としても活躍しています。
最後に、茂樹さんにとって“つくば”はどのような場所か伺いました。
「私はつくば生まれ、つくば育ちですが、子どもの頃と比べて街はずいぶんと様変わりしました。研究所や商業施設がたくさん出来て、TXも開通して……。ですが、工房と養豚場があるこの酒丸地域って、昔からあんまり風景が変わらないんですよ。田んぼや畑が広がるのどかな景色。開発が進む市街地からほんの10分ぐらい先に、変わらない風景もある。そんなつくばは良い街だなぁって思います」。
大切に育てた豚を愛し、そして自身を育んだつくばを愛する茂樹さん。つくばから、本物の“地産地消”を届けます。

取材当日、ちょうどスモークしていたベーコンの様子を見せていただきました。香ばしく焼いて食べるもよし、スープやチャーハンなど様々な料理に。

誕生から食卓まで。愛情注いだ自然派ハム・ソーセージで笑顔あふれる食卓を。

ぴあらハム
TEL:029-848-2072
つくば市酒丸767-1
ホームページ
https://hisamatsu-chikusan.com

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