「研究学園都市」として科学の街のイメージが根付くつくば市。昔から稲作や芝作がさかんですが、気候条件も良く、東京に近い便利な立地でもあることから続々と新規就農者が増えています。また、市の「農業サポーター制度」等を活用して、気軽に農業を楽しむ人も多数♪今回は、農業サポーターの手を借りながら、生産者として精力的に農業に取り組み、就農希望者の受入や独立支援も行う「YAGIファーマーズCLUB」の柳橋(やぎはし)さんにお話を伺いました。
【安全で美味しいイイトコどり野菜】
YAGIファーマーズCLUBの拠点は、圏央道つくば中央インターチェンジ近く、柳橋小学校のお隣です。通年栽培のネギをはじめ、ほうれん草や里芋、白菜、トウモロコシなど春夏秋冬いろいろな野菜を栽培しています。平成6年に大企業を早期退職し、脱サラで農業をスタートした柳橋さん。「最初にはじめたのはシイタケ栽培だったんですよ。ひとりでコツコツ、地道にやってきて、やっと(原木が)1万本まで来た!というところで東日本大震災が起こって……全部ダメになりました。そこからまたリスタートして、今の形まできました」と、これまでの自身の経験を振り返ります。作った野菜は主に生協の「パルシステム」や、みずほの村市場など地元の直売所に出荷。つくば市内の小中学校の学校給食にほうれん草などを供給することもあるそうなので、もしかしたら皆さんも柳橋さんの作った野菜を口にしているかもしれません。
YAGIファーマーズCLUBでは、良質な有機肥料を中心に土づくりを行い、可能な限り農薬を使用せずに美味しい野菜を栽培しています。肥料に使う牛ふんや鶏ふんは、市内の畜産農家からいただいているそうです。「食の安全も、美味しさも両方大事ですよね。二兎を追うのは大変ですが、そのイイトコどりを目指して頑張っています」と笑う柳橋さん。そんな柳橋さんの人柄に引き寄せられ、「うちの畑も引き受けてほしい」と近隣の農地も任されています。
【農業サポーターのリピート率の高い農園】
現在は4~5ヘクタールほどで作付していますが、柳橋さんとスタッフだけでは人手が足りないこともあります。そんなとき、柳橋さんが活用しているのがつくば市の農業サポーター制度です。
農業サポーター制度は、農作業時の人手不足で困っている生産者と、生産者からの要請に応じて農業ボランティアとして農作業のお手伝いをしてくれる方を結びつける、つくば市独自の取組です。農業に興味がある方や、生産者の皆さんとの交流を楽しみたい方、余暇を活用したい方など、様々な方が登録・参加しています。サポーターの皆さんにお願いする作業は、作物の植付や収穫、除草など簡単な内容なので、農業の経験がまったくないという初心者でも気軽に参加できます。
「毎月10名以上のサポーターさんに来てもらっています。主婦や、定年退職後の方、学生に、学校の先生、県外から来てくれている若い方もいらっしゃいます。週末にちょっとつくばに遊びに来てリフレッシュしているみたいです。いつも助けていただいて、本当にありがたいです」と柳橋さん。取材に伺った日も、3名のサポーターさんがお手伝いに来ていました。そのうちのお二人、川上さんと荒竹さんにお話を聞きました。お二人とも定年退職後にサポーター制度へ登録したそうで、なんと川上さんは9年、荒竹さんは7年も柳橋さんのところへ通っているのだそうです。
「だいたい週2回、半日ぐらいお手伝いしています。作業で身体を動かせて健康にも良く、まるでYAGIスポーツクラブです(笑)ここは若い人も仕事の息抜きにお手伝いに来ていて、色々な人と交流できるのもいいですね。何より、柳橋さんの人柄が最高です」と話してくれました。人が集まりにぎわいが生まれる、YAGIファーマーズCLUBの好循環が魅力の秘訣です。
【新規就農希望者の背中を後押し】
YAGIファーマーズCLUBでは、就農を希望する研修生の受入も行っています。「きっかけは、市内にできた農業者大学校(現在は廃止)の実習生の受入を頼まれたことでしたね。それからずっと、就農希望者の研修を続けています。自分も一人で始めた時は同じでしたが、農業は一朝一夕で身に付くものじゃない。農業の厳しいところもしっかり教えます。でも、独立して失敗したとしても、また戻ってくればいいですから」と微笑む柳橋さん。そんな面倒見の良さから、柳橋さんの元にはたくさんの研修生が集まってきます。これまで、YAGIファーマーズCLUBから独立して就農した人は10名以上!そのほとんどが県外からの新規就農希望者だといいます。独立する際には、柳橋さんが農地を紹介したり、野菜の販売先を紹介したりするなど手厚いサポートで背中を押しています。
「私ももう67歳。この先のことを考えて、みんなに迷惑がかからないように引き継ぎをしていきたいんです。自分が育てた研修生が引き継いでくれるのが一番いいですから。それに、7割ぐらいはうちと同じ野菜を栽培しているので、給食センターなどへの納入が厳しい時に助けてもらったりもしています。持ちつ持たれつです」と、柳橋さん。
実際に、YAGIファーマーズCLUBで農業を学びながら独立を目指している堤(つつみ)田(だ)さんにもお話を聞きました。「2022年の12月からYAGIファーマーズCLUBで研修しています。自分で農業をやりたいと考えた時に、筑波大の大学院に通っていた縁からつくば市での就農を決めました。つくば地域農業改良普及センターに紹介してもらってここに来たのですが、柳橋さんは何でもまず『やってみなさい』とチャレンジさせてくれるんです。どんどん失敗させてくれる。学べる機会が多くありがたい環境です」と堤田さん。2024年4月から独立予定で、ネギを中心に栽培していくつもりだそうです。また一人、つくばのファーマーに心強い仲間が加わります。
安心・安全で美味しい野菜を栽培し、地域も元気づけるYAGIファーマーズCLUB。皆さんも一度、YAGIファーマーズCLUBのおいしい農産物を召し上がってみてください。
取材協力:YAGIファーマーズCLUB
つくば市柳橋363-3
https://www.yagifarmersclub.com/
つくば市農業サポーター制度について、詳しくはこちらをご覧ください
https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/keizaibunogyoseisakuka/gyomuannai/6/3/1001437.html