今回は、石岡市にて1年2か月研修した後、令和6年1月につくば市内の農園にて経営を開始したばかりのいちごの観光農園Mori’s Farm代表の森直紀さんにお話を伺いました。いちご狩りができる観光農園をオープンさせ、今後の展開に期待が高まる若手農業者です。

【人生を変えた「とちおとめ」との出会いからいちご生産者へ】
「15年くらい前に、栃木県にある直売所へ行った時に、とちおとめが販売されていました。それまでは、スーパーに並ぶいちごしか見たことがなく、完熟のいちごは食べたことがなかったんです。しかし、その時に見たいちごは、色とツヤが全然違いました。粒のサイズもびっくりするほど大きくて。一口食べて、そのいちごの美味しさに心を打たれました!」そう語る、森さん。そのいちごによっていちご栽培に興味を持ち、いちご生産者のもとで半年ほど手伝いをさせてもらったことが森さんの人生を変えるきっかけになり、いちご生産者になるという夢を強く抱くこととなりました。その時に初めて、「いちご栽培の難しさ」を知ったといいます。その後、いちご栽培から離れ、機械修理の会社へ就職。14年ほど勤務する中でも、いつかいちご農家をやりたいという夢を抱き続けていたという森さん。夢の実現の地を地元の下妻市と隣接する「つくば」と定め、機械修理の職に就きながら、つくばのいちご生産者を訪れて手伝いをしたり、各地のいちごの観光農園を訪れたりしながら、自分の理想の農園スタイルを模索したといいます。「やるからには一度自分で体験してみないとわからないかなって。各地のいちごの観光農園に行きましたが、いちご狩りはあまりせず、見るのは設備や仕様ばかり。ここの通路はもっと広い方がお客さんは通りやすいな、ここの仕様は違う方が栽培しやすいな、など、他の農園を見て、ようやく自分の理想の仕様がまとまっていきました」。14年ほどかけて各地の観光農園を駆け回り、研究を重ねて自分の構想を固めた森さんは、自分の理想を実現するために、ビニールハウスも妥協することなく探し続けたとか。そんな森さんのハウスは、かつて、トマト生産者が使用していたもの。各地の観光農園を駆け回る傍ら、つくばを車で回ったり、スマートフォンアプリで地図をこまめにチェックしたりしながら、やっと理想のハウスを見つけたといいます。理想のハウスを見つけた森さんは、何度もトマト生産者の元を訪れ、諦めずに交渉し、やっと土地を借り、ハウスを購入することができたといいます。
さて、こだわりが非常に強く、全部自分のオリジナルの仕様でやりたいという森さん。機械修理の知識を活かし、高設ベンチ用資材の一部は、知り合いの生産者さんから譲ってもらうなどしながら、全ての設備を森さんが設計し、施工しています。まさに、森さんオリジナルの農園『Mori’s Farm』

【現代の技術をうまく活用し細部にまでこだわった、完全オリジナルの農園づくり】
「細かいところまでこだわって、完璧にやるのが僕のやり方なんです。少しでもずれていると気に入らなくて…こだわりが非常に強いんですよ」。そう語る森さんの施工は、まさに『完璧』。2段に植えられたいちごは高さもすべて計算済み。どの場所でもなるべく日光が入るような高さに設計されています。配管に関しても、普通は一棟のハウスには一本の配管のところ、森さんは品種ごとに肥料濃度を変えられるように、一棟に何本もの配管を設置。さらに、パイプの高さも綺麗に統一されており、完璧な出来はまさに森さんのアート作品と言っていいほど。「このパイプを見てください!この高さ!全部同じですごく綺麗でしょ」と、語る満足感たっぷりの表情はまさに職人です。
いちごを休眠させないよう光を当てるために設置された照明設備も、もちろんオリジナルの設計・施工。知り合いの電気屋に聞いて設計図を描き、温度管理やタイマーが設定できるようにWi-Fiも設置。圃場から自宅が離れているため、遠隔操作もできるように設定しているといいます。温度の設定具合と連動して天窓の開閉までも管理できるアプリを使用。また、遠隔で灌水量や肥料濃度の設定もできるという優れもの。アプリなどのシステムを駆使して少人数でも管理ができるようにしているといいます。「業者の方に施工をお願いすると、ここまでこだわって作業することはできないので気に入らないところが出てきてしまうんですよ。それで後悔するのであれば、いっそのこと全部自分でやった方がいいかなって。そして、全部自分でこだわって施工し、完璧に仕上げたことによる達成感で、モチベーションを上げているんです」。
さらに、お客さん目線を大事にしているという森さんは、子どもやお年寄りも歩きやすいように、綺麗で段差のない農園づくりを心がけています。通常、いちご狩りには、歩きやすく、汚れてもよい靴を履いていきますが、Mori’s Farmの農園は綺麗で、ベビーカーや車いすも通れるほど通路が広く、段差もないため、そんなことを気にする必要はありません。理想の農園づくりに妥協を許さない森さん。「来てくれるお客様に、心から安心していちご狩りを楽しんでほしいので、そのための努力は惜しみません。しかし、ほとんど人を雇わずに、上手にシステムや機械を利用し少人数で農園を管理しているんです」。

【森さん親子の魅力たっぷりの可愛らしい観光農園で楽しいひと時を】
現在、『Mori’s Farm』で栽培している品種は5品種。紅ほっぺ、おいCベリー、いばらキッス、とちおとめ、そして希少品種『ロイヤルクイーン』です。ロイヤルクイーンとは、かつてのいちごの主流である”女峰”の開発者である、元栃木県農業試験場の職員であった故赤木博氏が開発した品種です。水やりを抑えた栽培により、甘みをたっぷりとため込み、果皮がしっかりとした粒になるといいますが、その栽培方法は非常に難しく、収量も少ないといいます。そんな希少な高級品種も含めて、いちご狩りを楽しめるようにしています。
Mori’s Farmのいちご狩りプランは、45分間の食べ放題で、練乳が無料でつけ放題。園内に入ると、森さんのお母様手作りの可愛らしいデコレーションが出迎えてくれます。受付には、インスタグラムでMori’s Farmのアカウント登録をすると、フォロワー数の表示がリアルタイムで増える「フォロワーカウンター」を設置。フランス製で高価ですが、お客様に楽しんでもらえるためにと惜しみなく投資。現在、農園から情報発信はすべてインスタグラム、観光農園の予約は民間の予約サイトを通じて受け付けていますが、今後は自農園のウェブサイトで予約を管理できるようにしたいと、その立ち上げへ向けて準備を行っているところです。
また、Mori’s Farmではいちごの直売も行っています。そこにも森さん流のこだわりがあり、いちごをパックに詰める際は、2段にせずに、いちごの下にクッション材を敷いているといいます。「いちごを2段にしてしまうといちごが潰れてしまうので絶対にやらないと決めています」。粒がとても多く上品で綺麗な見た目のいちごパックは、贈り物にすれば喜ばれること間違いなし!
森さんは今後についてもこう話します。「今後はキッチンカーで冷凍いちごを使用した、削りいちごの販売などもやってみたいんです。そして、来年はすごい品種の栽培にも挑戦しようと思っているので、楽しみにしていてください!」

初シーズンにもかかわらずここまで細部にこだわり、常にお客様目線を心がけて管理しているここでしか体験できない森さんのこだわり尽くしの観光農園『Mori’s Farm』。森さん親子の魅力がたっぷりと詰まった農園に足を運んでみてください。

Mori’s Farm
茨城県つくば市沼崎2893−2
(検索する際は、Google Mapsにて「モリズファーム」又は、電話番号で検索してください)
TEL 080-3315-1515
営業時間 10:00〜16:00 (最終受付は15:00)
開園期間 1月3日ごろから5月中旬ごろまで(要予約、電話・インスタDM・インターネットから)
定休日 月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日が定休日)
料金 ●大人(中学生以上)2,500円 ●小人(小学生)2,000円 ●シニア(65歳以上)2,000円
●幼児(小学生未満)1,500円 ●3歳未満 無料
本情報は、令和7年3月現在の情報です。
状況により臨時休園や営業時間・料金の変更等が生じる可能性があります。
インスタグラムアカウント @mori.s__farm