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お酒に合う野菜でもっと食文化が豊かになる!/つくば谷口農園 谷口能彦さん

# 育てる人(農家)

近年、茨城県では新規就農者数が増加傾向にあります。その中でも、若手の新規就農者が増えているつくば市。気候条件がよく平地の多い恵まれた自然環境の下、多くの若手農業者が活躍しています。今回は、市内人気レストランも愛用するアスパラガスを中心に栽培する「つくば谷口農園」の代表・谷口能彦さんにお話を伺いました。

【お酒に合う野菜を作りたい!】

谷口さんは、茨城県日立市出身。つくば市内の大学で農業を学んだ後、農業ではなく一般企業に就職しましたが、29歳で会社を辞めてつくば市に戻ってきたそう。いわゆる「Jターン」型就農です。
「勤めていた時は、ビール会社でワインの仕入れの仕事を担当していました。元々、将来的には農業をやろうとは考えていたんですが、たくさんある野菜の中でアスパラガスを作ろうと決めた理由は、ワインにとても合う野菜だからです。私自身もワインが好きで、美味しいアスパラガスを食べたいと思ったから。〝お酒に合う野菜を作る農家〟というのが谷口農園のコンセプトなんですよ」。という谷口さんの言葉通り、彼の名刺にはアスパラガスと一緒にワインのイラストが描かれています。アスパラガスとワインは、実は鉄板とも言える組み合わせ。ヨーロッパではホワイトアスパラガスが主流ですが、爽やかな白ワインと一緒に楽しむ人が多いのだとか。他にも、ビールにぴったりの枝豆や、サラダやピクルスで美味しい赤カブ、玉ネギ、大根なども作っています。美食を愛する谷口さんが作るアスパラガスは、市内外のレストランや居酒屋、バーなどで愛用されていますがどこも評判店揃い。前職の経験を生かした強みも手伝って、料理人からの厚い信頼も得ています。
「谷口農園の野菜を使ってくれているお店には必ず足を運ぶようにしています。アスパラガスがどんな風に調理されているか、お客さんに満足してもらえているかどうか。ワインリストを見ながら、メニューなど、こちらから提案することもあります」。
飲食店と共に二人三脚で繁盛を目指し、地域の食文化の向上・発展に貢献したい。野菜を売って終わりではなく、取引先、そして顧客満足をも見据えている谷口さん。ビール会社時代の経験があったからこその目線です。

谷口さんのつくる赤カブも美味しいと好評です

【栽培が難しいアスパラガス】

就農しようとつくばに戻ってきた後、市内の有機農園で一年間学んだ谷口さん。独立し、さっそくアスパラガス生産に取り掛かりますが、その道は簡単ではありませんでした。
「つくば市内でアスパラガスを生産している農家さんに相談しながら、半分独学で作ってきました。栽培について詳しい参考書を見ながらやってみても、本に書いてある通りにはなかなかうまくいかないのがアスパラガス。植物としてもまだ明らかになっていない部分が多く、マニュアルが通用しないんです。手のかかる食材ですよ」。
アスパラガスは多年草で、一度植えると10年ほど収穫が可能。例年、春~秋にかけて収穫期を迎えます。食用として流通しているのはアスパラガスの若い茎の部分。切らずにそのまま成長させると身長よりも高く、緑色の細い枝をたくさん伸ばした姿になります。「春なら頭が出てからだいたい4~5日、夏場は早いと2日ぐらいで収穫サイズまで成長します。といっても、その時の気温で成長スピードが変わるので、収穫期は毎日天気予報とにらめっこしながら状態をチェック。春は毎朝、夏になると朝夕に収穫しなければ間に合わないので忙しいですね。どこからどんな太さが生えてくるかは無差別なので、運任せになる部分も大きい。もちろん、より良いアスパラガスが出来るように毎年ケアしていますが、本当に気難しいです」。
良い野菜作りは土作りから。谷口さんは、ミネラル分豊富な魚カスと籾殻を混ぜて発酵させたぼかし肥料を使い、土を生かす環境作りを行っています。また、極力農薬を使わないのもこだわり。手間ひまをかけてケアしているからこそ、谷口さんのアスパラガスの品質は保たれているのです。

手間ひまかけている分、安売りはしないと谷口さん。その価値ある美味しさです。

【鮮度抜群の美味しさを味わって】

現在、2棟のビニールハウスでアスパラガスを栽培。出荷先は、飲食店と直売所と個人直売でおおよそ同率ずつですが、評判が評判を呼び年々ニーズが増大。今後5年ほどで2.5倍ぐらいの規模を目指したいと谷口さんは話します。「露地栽培も試していましたが、数年前に台風被害を受け全量、ハウス栽培に切り替えました。前述の通り苦労も多いですが、つくば市の環境はアスパラガス栽培にとって大きな利点もあります。まず、都心と距離が近いので鮮度を保って出荷出来ること。そして、温暖な気候なので北海道等より長い期間収穫出来るのもいいですね」。美味しいアスパラガスの絶対条件が鮮度。収穫したてのみずみずしさを保つため、谷口さんは、収穫したアスパラガスをすぐに冷蔵庫へ入れて予冷し出荷まで管理します。「アスパラガスは温度に敏感で傷みやすいんです。収穫から出荷まで、スピード感をもって決め細かくケア出来るのは、個人農家ならではです」。
最後に、アスパラガスをより美味しく味わうためのポイントを、谷口さんに教えていただきました。
「私のオススメは、アスパラガスの天ぷら!衣を付けて揚げることで、旨みを逃さずに甘みを増すことが出来る。外のサクッとした食感に対して、中はジューシー。アスパラガスの甘みとほろ苦さがたまりません。リースリングの白ワインと合わせたいですね。それから、サイズによっても調理法は異なります。例えば、太いアスパラガスをボイルする時は、穂先の方が熱が通りやすいので、根元と穂先で茹で時間を変えてみて下さい」。
また、アスパラガスは、春採れと夏採れとで風味が異なるそう。春の方が味が濃くて、夏はさっぱりと爽やかな味わいを楽しむことが出来ます。ぜひ、食べ比べてみて下さいね。

 

ハウス内の様子。鮮度抜群のアスパラガスを味わえるのは、産地ならではの贅沢!

美味しいお酒を引き立ててくれる、とびっきりのフレッシュアスパラガス。幸福で満たしてくれるマリアージュを皆さんもぜひ体感して下さい。

 

つくば谷口農園
野菜を購入できる場所:
わくわく広場トナリエつくばクレオ店、わくわく広場LALAガーデンつくば店
野菜を使用している市内飲食店:
カフェ&レストランバスティーユ、他

https://tsukubataniguchifarm.stores.jp/

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