Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

つくば市でブドウを育て、つくば市で醸すワイナリー/つくばワイナリー 岡崎洋司さん

# 醸す人(地酒)

雄大な筑波山に見守られるつくば市では、近年、ワイン製造用のブドウを生産する農家が続々と増えています。そんな中、2017年に構造改革特区「つくばワイン・フルーツ酒特区」の認定を受け、果実酒製造への参入がしやすくなりました。北条地域の「つくばワイナリー」では、2019年に醸造所が完成。まさしく「純つくば」産のワインが誕生するまでのお話を伺いました。

つくばワイナリー醸造所併設のショップ

【筑波山麓に広がるブドウ畑】

古来から数々の和歌にその風雅さを詠われた筑波山。四季折々に美しい姿を見せる「紫峰」は私たちにとって自慢すべき宝物です。そんな筑波山の麓、平沢官衙(かんが)遺跡すぐそばに構えるつくばワイナリーでは2012年からワイン用ブドウを栽培しています。この場所でスタートするに至った経緯を、つくばワイナリーを運用する株式会社カドヤカンパニー専務取締役・岡崎さんに伺いました。「元々、宅地として分譲していたこのエリア一帯の土地、全部で18ヘクタールを当社で購入したのがきっかけです。見上げれば筑波山があって、歴史もある、とっても良い場所ですよね。この場所で何をしよう?と考えた時に、ここにブドウ畑が連なっていたらとても美しいだろうなぁと思ったのです」(岡崎さん)。その言葉通り、筑波山を背景にブドウの木々が並ぶ風景はとても素晴らしいもの。そんなブドウ畑に囲まれるようにして、つくばワイナリーの醸造所が建っています。2013年から山梨県で委託醸造を行っていましたが、ついに2019年からつくばで醸造を開始。つくば産ブドウを使い、つくばで醸した初の純つくば産ワインが誕生しました。醸造所に併設するショップでも好評を得ています。岡崎さんによれば「東京近郊では、醸造所とブドウ畑がこんなに近いところはなかなか見かけない」そう。日々ブドウが育つ姿や作業風景を間近で見ることができるのも、つくばワイナリーならではの魅力です。

収穫期を迎えたワイン用ブドウ。そのまま食べても美味しいんですよ!

【ブドウ栽培に適した場所】

ワインにとって、重要なキーワードが「テロワール」。テロワールとは、ブドウが育つ地域の気候風土等の特徴のこと。この言葉が示すように、ワインの風味には産地の環境が大きく影響します。「はじめ、ここでブドウを作ろうと考えた時に、ご縁があって志村葡萄研究所の志村先生にアドバイスをいただきました。ブドウ栽培とワイン造りに精通した専門家で、我々が育てている北天の雫や富士の夢を交配した方でもあります。ワイン用ブドウ栽培にとってまず重要なポイントは水分。降水量が多く、湿気がこもるような場所は適していません。幸いこの場所は水はけも良く、風の通り方も大変良いと先生にもお墨付きをもらえました」(岡崎さん)。現在、つくばワイナリーで栽培している品種は5種類。フランス・ボルドー地方原産のメルロー、同じくフランス原産で白ワインの代表的な品種シャルドネ、今注目の品種マルスラン、そして前述の日本原産山ブドウ系品種の富士の夢、北天の雫です。「最初に植えたのは、富士の夢と北天の雫でした。日本生まれなので、日本の気候に合った栽培しやすい品種ということで決めました」。通常、定植から収穫まで数年かかるところ、翌年には収穫が叶ったのもこの2種の特徴だそう。2013年にはつくばワイナリーブランドとして「TWIN PEAKS」がデビュー。また、岡崎さんはつくばワイナリーの環境の利点について、次のようにも話してくれました。「畑が醸造所のすぐ目の前なので、良い状態の果実を機を逃さずきちんと見極めて収穫できるのがいいですね。スタッフが手作業で、ひと房ひと房を確認しながら収穫しています。また、以前はまとまった量を県外へ輸送して仕込んでいましたが、この距離なら収穫後の鮮度も心配がない。ワイン造りには良い環境です」。つくばワイナリーでは、ブドウ畑の面積を今後も増やしていく予定。ゆくゆくは、ワインと一緒に楽しめるレストランなども作りたいと考えているのだそう。将来が楽しみです。

つくばワイナリーのタンク室

【紫峰のテロワール】

2019年のオープン以来、平日は地元市民、土日は市外からの来客を中心ににぎわいをみせています。最初にリリースされた無濾過ワイン「つくばプリモ」は、フレッシュな味わいを楽しめる反面、長持ちしないため一般流通が難しいもの。醸造所でしか手に取れない品です。「地元だからこそ楽しめる出来たてワインです。限定販売品ではありますが、これから毎年の定番にしたいと思っています。ぜひ、楽しみにしていてくださいね」(岡崎さん)。プリモを皮切りに、TSUKUBA BLANC(白)やTSUKUBA ROUGE(赤)などの定番商品。さらに、シャルドネやマルスラン、メルローといったヨーロッパ系品種のワインも順次ショップに並びます。同じ品種でも毎年ワインの仕上がりは異なるのも面白さといえます。ショップに並ぶワインそれぞれに、ショップ担当スタッフお手製のオススメの飲み方ラベルが貼られていました。食事の美味しさをより引き立ててくれる役割も持つお酒。ワインは洋食、和食なら日本酒……と決め付けがちですが、意外にもつくばワイナリーのワインは和食との相性が良いとショップ担当スタッフ。「それぞれ味わいは違うんですが、富士の夢という品種は不思議と醤油に合うんですよ」。岡崎さんも、「例えばプリモは赤ですが、お肉はもちろん、意外と魚料理とも合うと思います」と勧めます。パンの街つくばらしく、サンドイッチとつくばワインをバスケットに詰め込んでピクニックにお出かけするのも素敵ですね。

2019年2ndリリースの「つくばプリモルージュ」。無濾過ならではの特別な味わいです!

次の休日は、筑波山を眺めながら、つくばの美味と一緒につくばのワインを味わう……そんな贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?

Tsukuba Winery(つくばワイナリー)
TEL:029-893-5115
つくば市北条字古城1162-8
営業時間:(平日)13:00~17:00(土日祝)10:00~17:00
定休日:月曜日
https://tsukuba-winery.kadoya-company.com/

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