Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

世代を超えて根付く、つくばのビールをつくる/つくばブルワリー 延時崇幸さん

# 醸す人(地酒)

米と水に恵まれ、江戸時代の頃から酒造文化が続くつくば市。近年では「つくばワイン・フルーツ酒特区」認定を受け、筑波山麓を中心にワイン醸造所が誕生するなどつくばのお酒は新たな広がりを見せています。2020年には、ワイナリーのみならず地ビールのブルワリーもオープンしました。「地元の人に楽しんでもらえて、100年後もつくばで続くような何かを起したい」そんな想いから、地域に根ざしたビール醸造所「つくばブルワリー」を稼動させた延時崇幸さんを取材しました。

【つくば市になかった、地域に根ざしたブルワリー】

つくば市民の憩いの場所、洞峰公園のすぐ目の前に建つつくばブルワリー。「この場所がいいなって思って決めました。緑を眺めながらオープンデッキでビールを飲んだり、開放的なロケーションですよね。ビールを飲みに来るお父さんやお母さんと一緒に、小さな子どもも一緒に遊びに来てくれるんですよ」。和やかな光景を思い描きながら、笑顔で話してくれたのは代表の延時さん。山口県生まれの水戸市育ちで、28歳の時に市内で映像会社を設立して以来、10年が経ちました。「仕事で、つくばをはじめ県内色々取材しているなかで、地元を盛り上げたい!と頑張っている人や企業にたくさん出会いました。そんな皆さんに影響を受けて、自分もつくばのまちづくりの役に立つような事業をやりたいと思うようになったんです」と延時さん。どんなことをしようかと模索するうち、Tsukuba Vineyard(つくばヴィンヤード)を知り、ぶどう栽培のサポーターとして参加をしたそうです。「皆でお手伝いをして、ぶどう畑でワインを飲んだりしてとっても楽しかったんです。地元で、地元の人たちがつくったお酒で、地元を盛り上げる……理想的な形だなと思いました」。地産ワインが繋ぐ輪の中で、延時さんはふと「そういえばつくばにはブルワリーがないな」と気づいたといいます。ビールは、日本人の生活の一部として身近なお酒。近年では、全国各地で個性豊かな小規模ブルワリーがリリースするクラフトビールが人気です。中には米やフルーツなどの地域を代表する素材を使った特色ある地ビールも続々と登場。そんな地域密着のブルワリーは、延時さんが思い描いていた「つくばに根ざし、つくばの人に楽しんでもらえる、つくばになかったもの」の形にぴたりとハマるものでした。

(写真右から)PEBBLES BEER「福来みかんペールエール」、「Tsukuba RED FROG」、「Ink Drop Porter」。容器持参でビールのテイクアウトも可能。

【世代を超えて愛されるビールへの願い】

ビールは、日本酒やワインと同じく酵母の働きで糖分を発酵させてアルコールをつくる醸造酒。その歴史は非常に古く、起源は紀元前にまで遡ると言われています。「目には目を、歯には歯を」で知られる古代バビロニアのハンムラビ法典にもビールに関する内容が記されているのだとか。また、中世になるとヨーロッパの修道院でもビールがさかんにつくられるようになり、今なお続く老舗醸造所も。現存する世界最古のビール醸造所といわれるドイツの「ヴァイエンシュテファン醸造所」は、なんと1040年創業。修道院を起源として1,000年近くもの歴史があるそうです。このように、海外では何百年も続く地ビールメーカーが少なくなく、各地でそれぞれの地域に根ざしたビールが愛されています。「そんな風に、地元にビール文化が根付き、末永く続いていってほしい」……そうした想いから、ブルワリー名にはこの地の名を冠したと延時さん。「ビールを飲みに来るお父さんやお母さんと一緒に遊びに来ている小さい子どもたちが、大人になって、今度はビールを飲みに来てもらえるような場所になれたらと夢見ています。もしも地元を離れたとしても、ビールを飲むたびに“つくばにもビールがあったな、お父さんやお母さんが飲んでいたな”と思い出してほしい」。世代を超えてつくばと人を結ぶ“かすがい”となる場所。それこそがつくばブルワリーの目指す姿です。
ちなみに、つくばブルワリーのビールには「PEBBLES BEER(ペブルスビール)」というブランド名がついています。PEBBLES(ペブルス)とは「小石、さざれ石」の意。さざれ石と聞いて連想するのは、国歌“君が代”ではないでしょうか。その歌詞にあるように、つくばに生まれた小さなブルワリーが何十年、何百年と長い時を経て地域をつなぎいわおとなるほどの力になる……そんな願いも込められています。

外光射し込む明るい店内の奥、銀色のタンクが所狭しと置かれた醸造所。仕込みに使った残り麦芽は、筑西市明野のダチョウ農家で餌として活用。

【つくばを感じるクラフトビール】

ガラス越しに醸造タンクを見ながら味わうビールの美味しさは格別。縁のある県内外のブルワリーからのゲストを含め6~7種が並び、それぞれに個性豊かな味を楽しめます。「経験も知識もゼロでしたが、都内のブルワリーで研修し教えてもらいました。伝統的なビールと先進的なビール、どちらも取り入れて、つくばらしいビールをつくっていきたいです。流行りを追いかけるよりも、この土地の人に喜んでもらってこそだと思っています」と延時さん。ぜひ注目してほしいのが、それぞれのビールにつけられたユーモア溢れる名前です。フルーティで飲みやすい軽めの味わい「常陸の不死鳥(ひたちのふしちょう)」は、かつて小田城を治めていた小田氏治の異名から。優しくまろやかな中に程よい苦味のある「金色姫IPA(こんじきひめアイピーエー)」は、筑波に伝わる美しく悲しい金色姫の伝説から。香り豊かで飲むうちに楽しい気分で心も踊るような一杯には、古の筑波山を思わせる「つくば嬥歌(かがい)」という名を。「地元にまつわるものや、知る人ぞ知るエピソードを交えた名前をつけています」。中でも、つくばブルワリーの看板的な一杯が「Tsukuba REDFROG(つくばレッドフロッグ)」。記念すべきファーストバッチ(初仕込み)でつくったもので、筑波山のシンボルとも言えるFROG=カエルを冠しています。「レッドエールというスタイル(※)です。個性的なビールかもしれませんが、飲みなれてくるとこれに落ち着くという人も多い。僕は一番これが好きなんです」と笑顔をみせます。さらに、延時さんはつくば産の素材を取り入れたビールにも積極的にチャレンジ中。2021年1月には、福来ふくれみかんの果汁を使ったペールエールをリリースしました。「他にもブルーベリーやぶどう、米など色んな地元素材とコラボができる可能性を想像しています。市内には麦やホップを作っている農家さんもいるので、オールつくば素材で醸したビールにも挑戦する予定です」。
つくばの暮らしを豊かに彩る、新たな楽しみがまたひとつ増えました。PEBBLES BEERとともに、素敵なつくば時間を過ごしませんか。
※レッドエール…名前の通り、赤みがかった銅色が特徴。つくばブルワリーでは深いコクやカラメルのような香ばしさ、心地よい苦味が調和した芳醇な味わい。

海外に馴染みのある方も多く暮らすつくば市。「お客さんの2割ぐらいが外国人の方」と本場のビールを知り、厳しい目と舌を持つ層からも好評。

人と人をつなげ、人とつくばをつなげ、つくばと未来をつなぐ、つくば発のビールで乾杯。

つくばブルワリー
TEL:029-846-7252
つくば市二の宮2-14-15洞峰の家102
平日17:00~0:00、土曜日12:00~0:00、日曜日12:00~21:00 ※営業時間は変更の場合有
定休日 月曜日 ※火曜日不定休
https://ibanavi.net/shop/12812/

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