Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

地元産素材に支えられた和の職人/お料理 わ可ば 店主 安藤公一さん

# 料理する人(お店)

昼は気軽な和食ランチ、夜は職人の技術が光るご馳走コース。贅を尽くした一枚板のカウンター越しのオープンキッチン。2013年のオープン以来、とっておきの和食を楽しめる店として人気のお店です。素材の大切さを知る和の職人が選ぶのはつくば市産の野菜や筑波山麓の山菜、そして常陸の国の肥沃な大地が育てた肉や魚でした。そんな和の真髄に迫る職人につくば市産素材の素晴らしさをうかがいました。

【基本に忠実に当たり前のことをきちんと】

店主の安藤さんは京料理の影響を色濃く受け、独自に発展した加賀料理の地・金沢で修業を積み、その後都内の割烹でさらに研鑽。下積みから和食の心と技を習得し、2013年につくば市にわ可ばを開業しました。料理を作るうえでのモットーは「温かいものは温かく、冷たいものは冷たく…」と料理の基本とも思えるもの。しかし、これはとても意味の深い言葉。和食の世界では煮方、椀方、焼方、揚場など分業制。そんな分業化されている各持ち場が全て同じタイミングで料理を仕上げるのは実は至難の業なのです。「きちんと料理を提供するためには段取り8分です。仕込みから、作業工程のひとつひとつに至るまで、全てが計算されていないといけません。きちんと準備し、それを実践できるから、温かいものを温かくお客様にお出しできると思っています」と安藤さん。

食べ手側のことだけを考え、美味しいと思える瞬間に美味しいものを提供する。その姿勢はまさに和の職人。「だからうちの味付けは温かいものは温かいときに食べて一番美味しく思える温度で味付けしています」と続けます。基本に忠実で和食の道を貫き通すその姿勢が、多くの常連客を虜に。市内でも屈指の人気店へと成長。京都の影響を色濃く受けた加賀料理に代表される金沢での修行と、全国から美味しい食材が集まる東京の有名割烹店での修行が実を結びました。そんな安藤さんがここつくば市でもうひとつ大切にしていることがあります。それが『地元産素材』です。旬の食材を大切にする同店にはやはりグランドメニューがありません。それは、その時々に仕入れられる旬の素材でメニューを決めるから。素材の味を引き出す和食において、素材の重要性を知っているからに他なりません。

筑波山で収穫される山のめぐみはわ可ばに春を告げるつくば産素材のひとつ

【つくば市産素材の魅力とは】

安藤さんは公設市場の決まった業者と、筑波山の麓小田城址の近くの畑を耕す大形の農家さんから直接仕入れています。野菜の中にはつくば市産のものも多く、春になると出回る筑波山で採れる山菜は特にお気に入り。全国から美味しいものが集まる東京の山菜と比べても、筑波山の山菜は特に優れていると安藤さんは話します。「都内で仕入れる蕨は蕨の芽である鉤蕨(かぎわらび)だけしか美味しく食べられないんですよ。でも、筑波山の蕨は根元の方まで柔らかくて美味しい。その差は包丁を入れた瞬間に違いが分かるほど。毎年春がやってくると必ず仕入れています」

また、安藤さんは続けるように地元食材を大切にする理由を語ります。「やっぱり旬の食材を一番美味しいときに、一番美味しく使えるのは産地の特権。野菜でもなんでもそうだけど、長い距離を運ぶ分だけ食材の鮮度は落ちるしコストもかかる。産地なら今まさに美味しい食材を鮮度の良いまま仕入れて、その素材の美味しさを引き出す料理ができる。だからうちでは季節によって献立は変わるし、仕入れによってメニューが決まります。いつもこの食材がないと料理ができない…では料理人としてダメですしね。それに、農家さんから分けてもらうまだ使ったことのない野菜との出会いも面白いですよね。この野菜はあの野菜の仲間だからこうやって料理したら美味しくなるんじゃないかなって想像しながら献立を作っていくんです。初挑戦の食材で美味しい料理を組み立てるのは料理人の楽しみのひとつ。いままでの経験と自分の技量が試される瞬間ですよね」と安藤さん。特に夜のコースでは、安藤さんの技術の粋と豊富な経験がつまった料理を頂けます。手軽なランチも良いのですが、わ可ばの真髄はやはり夜のコースにあるようです。

ランチは肉と魚を交互に日替わりで、この日のメインは赤魚の幽庵焼き

【これからも地元産素材にこだわって】

そんな安藤さんはつくば市の特徴をこう捉えています。「金沢の料理はちょっと甘味が強いんです、それに対して東京の料理は甘味が弱い。郷土の味って必ずあるんです。そんな中、わたしの料理はその中間。両方の良いとこどりができているんじゃないかと思っています。でも、最初につくば市でお店をやると決めたとき、お客さんに『この土地の味付けじゃねぇ!』って言われるんじゃないかと不安でした。でも、そうではなかった。つくばの中心部は都内と同じように、転入者が多い。だから、昔からこの地域で伝わっている味というのに慣れてない人が多い。だからわたしのようないきなり外から来た人間の料理でも寛容に受け入れてくれたんでしょう」そして安藤さんはこれからのわ可ばをこう語ります。「これからも、いままで以上につくば市産の素材を使っていきたいですね。常陸牛を生産している畜産家さんはいるけど、質の良い豚や鶏があったら嬉しいですよね。それでも、いままで通り、そのときある旬の食材を美味しく料理していくことが大切だと思っています。旬を大切にすることが、素材の一番美味しい時期を大切にすること。そのことはこれからも守っていきたいですね。そして和食の基本を忠実に守ること。茶道にも通じるように、和食には場所や順序がきちんときめられています。ユネスコ無形文化遺産にも選ばれた和食の伝統をきちんと守っていきたいです」

つくば市にはまだ出会えてない食材が多くあるかもしれません。それでもこの和の職人は、その素材との出会いを楽しみ、この店を訪れる全ての人を満たすために努力を惜しみません。

ランチ限定の意外な人気メニューの和風つけ麺も人気です

ランチタイムには日替わりで肉と魚を交互に提供。季節のごはんもお楽しみ。和食専門店には珍しい和風つけ麺やぶっかけ担々麺など変り種も。夜のコースは5,000円(税サ別)から提供中。大切な人と美味しい食事を頼める素敵なお店です。

お料理 わ可ば
TEL : 029-896-8155
つくば市二の宮3-2-11 平田ビル1F
営業時間 : 11:30-14:00、17:30-22:00(最終入店20:00)
定休日 : 日曜・祝日

 

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