Farm to Table つくばについて 地産地消 美味しいつくば産 特集 編集部コラム

つくばの毎日に変化を提供するスペインの美食/Cambio 大関慶子さん

# 料理する人(お店)

世界の先端技術が集積するつくば市は、世界各国から来訪者が滞在することもあり国際色豊か。その影響は食文化にも色濃く、本場の味を知る人が認める本物の料理店が市内に数多くあります。中でも、舌の肥えた美食家に支持されていると評判の店が研究学園地区にある「Cambio(カンビオ)」。自らが体験し、魅せられたスペインの美食を多くの人に知ってもらいたいと、その想いを届ける場につくばを選んだシェフの大関慶子(おおぜきけいこ)さんにお話を伺いました。

【まだ知られていない、本当に美味しいスペイン料理を】

2015年、学園の森にオープンしたCambio。「スペイン料理」の看板を掲げる店はまだなかなか見かけなかった当時「本当に美味しいスペイン料理を知ってほしい」とお店をスタートさせた大関さん。神奈川県横浜市の出身で、大学卒業後20代半ばまでは都内でOLとして働いていたそうですが、アメリカ・ニューヨークに刺激を受けそこで働いてみたいという強い夢を抱き、実際に就職先を見つけて渡米するという思い切った経歴の持ち主です。
「どんな仕事なら実現できるかなと考えて、日本食レストランに着目しました。仕事の傍ら夜間の調理学校に通って勉強して、渡米後は寿司職人として経験を積みました。ニューヨークでは5年過ごしましたが、とても楽しかったですよ。そこでミシュランガイド三ツ星レストランで、本物のフランス料理を食べて、感銘を受けました」(大関さん)。それまで知らなかった「未知なる料理の世界」に興味を持った大関さんは、ニューヨークから帰国後名門料理学校ル・コルドン・ブルーの門を叩き、フランス料理の基礎を習得。好奇心旺盛で、チャレンジ精神に富み、それを実現するための努力を惜しまない……そんな大関さんにとって、料理人は天職だったのかもしれません。
さらに料理の道を究める大関さんは同校卒業後、今度はスペイン・バルセロナへと向かいます。
「世界の中でもスペインは料理の最先端。“ヌエバ・コシナ”(スペイン語で“新しい料理”)という独創的な料理が生まれています。そんなスペインで学びながら、星付きレストランをたくさんまわりました」と大関さん。例えば、液体窒素や遠心分離機などまるで実験のような手法や化学的な知識を取り入れ楽しませる前衛的な料理スタイル「分子ガストロノミー」もスペインで花開き、世界に広まったといえます。そんなスペインで、大関さんはCambioの源流に出会いました。

ビビッドな色使いや斬新なデザインパターンを取り入れた店舗内のインテリア。現代のスペインバル・レストランをモチーフに施工

【世界一の美食の街で出会った衝撃】

広いスペインの中でも、世界中の美食家から熱い視線を注がれているのがスペイン北部のバスク州にあるサン・セバスチャンという街。人口はつくば市よりも少ない18万人ほどの地方都市ですが、ミシュランガイド三ツ星レストランをはじめハイレベルな料理店が立ち並び、スペイン全土の中でも最も美味しい料理を味わえるといわれる場所なのです。大関さんがスペイン料理の店をオープンさせるきっかけも、この街にありました。
サン・セバスチャンを訪れた時の衝撃について、大関さんはこう話します。「サン・セバスチャンは世界一の美食の街といわれていて、星付きレストランがひしめいているのはもちろん素晴らしいのですが、街なかの小さなバルで出しているピンチョス(※)が三ツ星レストランにも劣らないほど美味しかったんです!ピンチョスを名物に町おこしもしていて、数多あるバルそれぞれが趣向を凝らしたものを作って腕を磨き合っている。私もこのスタイルでやりたい、って思いました」。
大関さんが感銘を受けたサン・セバスチャンのピンチョス。そのエッセンスはCambioで提供しているピンチョスにもフィードバックされています。見た目にも美しく、口に含めば食感が楽しく、思わず目を輝かせてしまうような美味しさ。世界を魅了するヌエバ・コシナをつくばで体験できます。
ところで皆さんはスペイン料理と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。大ぶりの平鍋でたっぷりの具材とともに米を炊き上げるパエリャ、お酒のお供に最高の生ハム、ニンニクの風味が効いた冷たいスープのガスパチョ、オリーブオイルで具材を煮込む熱々のアヒージョなど……日本でもよく知られたそれらはほんの一角。スペインは各地で個性豊かな食文化が根付き、レシピも食材も千差万別なのです。「スペインは地域ごとの伝統や料理を大切にしている国。例えば、パエリャはお米で作るというイメージがあるかもしれませんが、バルセロナにはお米でなくショートパスタで作る“フィデワ”というパエリャもあるんですよ」(大関さん)。フィデワはCambioの定番メニューとしても好評です。
また、Cambioでは現地の最新情報やトレンドを取り入れてメニューを作っています。スペイン料理はこう、と先入観にとらわれることなく、自由な心で味わってみてほしいと大関さんは微笑みます。
※ピンチョス…伝統的には生ハムやマリネ、チーズなど様々な食材を一口大のパンの上にのせ、串で刺した料理。現在では串で刺すものだけでなく、お酒と共に気軽に味わうフィンガーフードとして多彩なバリエーションのピンチョスが登場

市内「有機農園モアーク」のエディブルフラワーやマイクロリーフを使い、目からまず楽しませてくれるピンチョス。右から「桜エビとイカ墨のコカ」、「花とチーズ」

【つくばの上質な食材を生かしたメニュー】

多大な影響を受けたスペイン留学から帰国後、美食家憧れの超一流店タパス・モラキュラーバー(マンダリンオリエンタル東京)をはじめ都内料理店で研鑽を積んだ後、パートナーの地元・土浦市に近いつくば市を選び移住した大関さん。つくばでの出店を決めた理由を伺うと「発展性があり、研究所も多く海外の方にも縁がある街だと感じたので選びました」と話します。その言葉の通り、開店当初から今まで長らく通うスペインの方もいらっしゃるとか。また、つくばでは素敵な食材との出会いもあったと大関さんはいいます。「市内で有機野菜を栽培しているモアークの野菜を開店からずっと使っています。実は、つくばに引っ越してきてお店を始めるまでの間、モアークの加工部門で5年間勤務していました。実際にモアークの野菜を自分の舌で味わって、その味を信用し自分の店でも使いたいと思いました。こんなに美味しい野菜を地元で作っているこということをぜひ知ってもらいたいです」(大関さん)。中でも、大関さんが「モアークの右に出る者はいない」と絶賛するのがベビーリーフです。Cambioで提供しているサラダは、このベビーリーフを使った「モアーク産有機野菜サラダ」のみ。素材をドレッシングと和えて出すだけと侮りがちですが、Cambioのサラダはまるで真逆です。「モアークサラダの注文が入るとすごく緊張します。ほんのちょっとしたバランスの崩れで台無しになってしまう。ベビーリーフ自体の味がとても濃くて、うまみや甘みだけでなく、えぐみや苦みといった味の要素全部を兼ね揃えているんです。これこそがモアークの野菜の魅力なんですが、それを前面に出すと引いてしまうのでうまく中和するように、最高級の素材だけを使ったシンプルなドレッシングを野菜全体にまとわせる。下準備から仕上げまで、とにかく全工程に気を遣って作っている繊細なサラダです」(大関さん)。また、大関さんは最後にこうも話します。「現代の日本人は味覚が弱くなってきていると思うんです。野菜も食べやすいもの、分かりやすいものを好み、苦みや酸みといった要素を避けている。でもモアークの野菜はちゃんとパンチがあって、本当に良い野菜。ぜひ皆さんにも食べてみてほしいですし、その味を邪魔せず、より美味しく食べられるような一品を作りたいです」。
世界各地で得た美食の知見に、つくば産素材をひとさじ加えれば、日常に変化をもたらすエッセンスに。ぜひCambioの美食を味わってみて下さい。

モアーク産有機野菜サラダは混ぜ方も重要。「ドレッシングを全体的にうすくまとわせるようにして、まろやかに」と大関さん

見て、食べて、美味しく、楽しむ。つくばで世界の美食を味わって。

Cambio
TEL:029-893-6363
つくば市学園の森2丁目39番地4 イストワール001号
火曜日定休 臨時休業あり
※8/1現在、テイクアウトメニューのみでの営業。テイクアウトメニューや受付・受け渡し時間等については店舗ホームページをご覧下さい
https://www.cambio-tsukuba.com/

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