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毎年の実りが待ち遠しい!足しげく通うファンも多いイチジク農家/福田農園 福田文さん

# 育てる人(農家)

アラビア半島南部が原産で、江戸時代に日本へ伝来したと言われるイチジク。古くは旧約聖書にも登場し、栄養価に優れた果物です。そんなイチジクがつくば市内で作られているのをご存知でしょうか?生産者の1人、「福田農園」の福田文さんにお話を伺いました。

 

【農業初心者から生産者へ】
宮城県に生まれ、その後千葉へ移り暮らしていた福田文さん。結婚を機につくば市へやってきた文さんが、この場所でイチジクを作るまでにはどのようないきさつがあったのでしょうか。
「嫁いで来た福田家は、明治からこのつくばで4代続く農家でした。水海道(現常総市)から今の場所に出てきたと聞いています。私が来た頃は米を中心に、サツマイモなども作っていました。夫は勤めに出ていたので、私が義両親の農作業を手伝っていて。結婚するまでは畑仕事なんてした事がなかったから、イチから教えてもらいながら覚えていきました。最初は雑草と芽の区別もつかなかったのが、そのうち一人でコンバインに乗って稲刈りに行くまでに成長しましたよ」と笑う文さん。分からないことだらけだったけれど、持ち前の好奇心で楽しみながら農業のイロハを覚えることが出来たといいます。
そして子どもの手が離れたことをきっかけに、自分でも何か作ってみたいと考えたそう。文さんの成長を見ていた義両親も賛成してくれたそうです。
「最初は休農期にイチゴを作ってみようかなと思ったんですが、調べてみたら難しそうで。他に何かいいものが無いかと考えていたら、ちょうど地域のJAでイチジク部会(※現在は解散)を立ち上げることを聞いて、チャレンジしてみることにしました」。
こうして始まったイチジク栽培ですが、なんと初年度は全てダメになってしまったそう。「最初は露地栽培で作ったんですが、露地は管理が難しい。つくば地域農業改良普及センターの先生からハウス栽培を勧められて、ハウスに切り替えたら無事に収穫出来るようになって良かったです」。
初めて収穫を迎えた時を振り返って「嬉しいというひと言では表現できないような、格別の気持ち。ピカピカ、ツヤツヤでみずみずしい実をこれから収穫出来るんだと感動しました」と文さんは話します。

冬に落とされた枝から、やっと新芽が出てき始めたイチジクの樹。

【苦労と喜びは表裏一体】
福田さんの自宅前に並ぶ4棟のビニールハウス。その中にずらりとイチジクの木が64本並んでいました。イチジクは本来、高さのある木ですが、ハウス内の木は背が低く、枝が地面と水平に横方向へ伸びています。これは「一文字仕立て」という方法で、手入れや収穫がしやすくなるのだそう。また、ハウス栽培に切り替えたことで天候を気にせず作業出来るようになったのも幸いでした。
「育てているのは桝井ドーフィンという品種。実が採れるのは毎年7月半ばから10月ぐらいまでで、毎日2回、朝と晩に収穫です。熟しているかどうかは色づきと感触で判断します。何百個と全部手でもぎるので、だいたい1時間半~2時間ぐらいかけて収穫。その後すぐ包装。イチジクは日持ちしないので、晩に収穫した分と朝に収穫した分を毎日すべて出荷します」。
約3ヶ月の収穫期に入ると毎日この繰り返しで休む暇もありません。以前は自分で直売所に納品したこともあったそうですが、全てほぼひとりでこなす身のため今は軒先販売と土浦公設市場の仲卸、その他業者に出荷する形に落ち着きました。
「収穫の時期はとにかく毎日忙しくて大変。でも、ありがたいことに口コミで広まって、ここへ買いに来てくれる方が増えました。イチジクは嫌いだったけれど、私のイチジクを食べたら美味しくて好きになってくれたという声も……。人に差し上げたいと多めに買っていかれる方や、車の中でさっそく食べるなんて方もいらっしゃいます。嬉しいですね」。
福田農園では、極力農薬を使わずに作物を育てています。減農薬・無農薬にこだわる市内レストランでも愛用される、安全・安心さも魅力です。

新しい枝の間に膨らんでいる部分がイチジクの赤ちゃんかもしれません。

【小規模経営だからこそ出来ることを】
現在は、退職した旦那さんが主に米作を担当。作付面積は2ヘクタール弱と小規模ながら、イチジク同様に根強いファンが多いといいます。
「お米はコシヒカリで、JAへの出荷と軒先販売で全て売り切っちゃいます。飲食店との契約はバスティーユさん1軒のみです。近隣の方を中心に定期的に購入してくれる方はもちろん、イチジクと一緒に並べておくと〝こっちも美味しそうだから〟と両方合わせて買っていってくれる人も多いんですよ」と文さん。福田農園では種蒔きから精米まで全て自分たちで行っているので、精米したてのものを購入出来るのも人気の理由です。
「夫婦ふたりでほぼ全ての農作業をまかなうのは大変ですが、大きくない農家だからこそ管理を含めて出来る限り手間をかけています。お米は精米したて、イチジクは採れたて。ウソをつくこと無く、どのお客さんに対しても平等に対応することを大切にしています。順番をしっかり守ることもルール。どんな時でも必ず注文順に対応するようにしているので〝常連さんだから頼まれなくても取って置いた〟というのも無しです」。そんな誠実な文さんの人柄もまた魅力のひとつです。
福田農園では市で取り組んでいる「農産物オーナー制」にも参加。用意している作物は小玉スイカにトウモロコシ、ジャガイモなど。種蒔きや収穫を体験でき、採れたての野菜を食べることが出来ると好評です。
取材の際に、文さんが「よかったら食べてみて下さい」と出してくれたのはイチジクのジャム。小さいサイズのものをカットせずそのまま煮たもので、ほんのり甘さにプチプチした食感としっかりした果肉が食べ応えもあり美味でした。ハウスで育った完熟イチジクは皮が薄く柔らかで甘い。生で皮ごと食べるのがとっておきですが、ジャムやコンポートなど加工用にB品も人気です。
イチジクは販売量が限られているため、購入希望の方は事前に連絡の上足を運んでほしいと文さん。シーズンはじめから終わりまで美味しくいただけます。

文さんお手製のイチジクジャム。そのままでも、ヨーグルトと一緒に食べても美味でした。

真っ赤に色づいたツヤツヤの果実は見た目から食欲をそそられます。もぎたての完熟したイチジクが味わえるのは産地ならではの特権です!

福田農園
TEL:090-4051-5155
つくば市下広岡1055-12

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